【短編】雪と鯨とフォトグラフ
「他の子に頼めば?ほら、ゼミの美和ちゃんとか可愛いじゃん!絵になるよ」
すると鯨は私を眠たそうなトロンとした目で見た。
「んー」
「あとは、モデル体型の里奈ちゃん。きっと喜んで引き受けてくれるんじゃない?」
「ん~…いや!お前がいい」
「な…何で?」
「何でって言われてもなぁ。何となく」
何となく、か。
これはどう取ったらいいんだろう。
鯨の澄んだ瞳に私が映っている。
そんな目で見られたら、私どんな顔すればいいの。
鯨はそのまま目を閉じてしまった。
あーあ。
このままじゃ、寝ちゃって起きない。
でも、それでいい。
この寝顔が見てられるんだったら。
鯨が静かに寝息を立てる。
柔らかい髪。
長いまつげ。
ねぇ、鯨。
ただの気まぐれなのかなぁ。
どんな気持ちで私がいいなんて言ったの?