【短編】雪と鯨とフォトグラフ
「あ~!何すんだよ!返せ」
うまく身をかわす私。
「だって寒いんだもん。いいじゃん、半分こ」
「片方だけひゅ~ひゅ~する…。はぁ。じゃあその代わり、今日もコタツ入りに行っていい?」
「え~また来るの?」
「いいじゃん!減る物じゃないし。ほら、もっと早く歩くぞ」
鯨は猫背になって
ポケットに手を突っ込んで
歩くスピードをあげた。
私はその後に、
ちょこまかとついていく。
大きい手袋。
ずっと鯨がしてたから、ほっこり温かい。
確かに寂しい一人もん同士。
でもまぁ、今の生活も悪くはない。
古ぼけた草色の陸橋を渡る。
車が激しく流れていく。
ここで出会った。
とんだ勘違い野郎に。
アホでお節介な“鯨”に。