【短編】雪と鯨とフォトグラフ
「いらないなんて言うなよ」
―――え?
鯨の声がした。
それと同時に頭の上から何かが大量に降ってきた。
地面に落ちた物を見ると、それは……。
「……鯨」
思わず顔をあげた。
鯨はちょっと拗ねた顔で笑っていた。
落ちてきたもの。
まるで雪のように、天使の羽のように落ちてきたもの。
それは、鯨が部屋の窓から撮った、陸橋の上の私の写真達だった。
何枚も、何枚も。
さっき破ったはずの写真が沢山散らばっていた。
よく見ると、私の服装が違う。
空の色も違う。
時間も違う。
だけど必ず同じ所から、同じアングルで撮られている写真。
どういう事…?