【短編】雪と鯨とフォトグラフ
―…


花の大学生。
念願の一人暮らし。


寂れた小さいアパートだったけど、
そりゃあもう天国みたい。




夜遊びが出来るとか、長電話し放題とか、
そんなんじゃなくて、



一人で考え事をする時間、
一人で黄昏る時間ができた事が、
すごく嬉しかった。




なぜなら私の実家は、
兄弟が多くていつも騒々しかったから。




部屋は二番目の妹と共同で使ってたし、
お兄ちゃんの友達がいつも家に出入りしてたり、


お母さんが玄関の前で近所のおばさんと
ずっと世間話してたりして、




そりゃあもう、
思春期の娘が心異議なく暮らせるような環境じゃなかった。





今思えば、よく耐えたよな、私。




私はずっと前から、
自分の世界に入り込んでしまう癖があるらしい。



授業中はいつもボーっとしていた。

よく通知表に“どうも上の空”とよく書かれていたっけ。
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