甘美なる予感
動けない。
時が止まったように、瞬きすら出来ない。
そんな私と彼の視線が重なる。
そしてあの頃と同じように、私にしかわからない微笑みを浮かべた。
(…あぁ…)
きっと今日の夜、私の携帯は懐かしい着信音を鳴らすのだろう。
(だめ、だめ…)
いくら頭で繰り返しても、私はきっと彼の誘惑を断ることは出来ない。
五年間、変えることの出来なかった番号とメールアドレス。
それが燻っていた恋心を目覚めさせる予感がした。
【甘美なる予感 end】