外国育ちのお嬢様は硬派がお好き
「・・・うそ。私より・・・」
「上っすね」
「だったらなんで・・・敬語?」
「片桐さんはなんか混ざってるから、あれですど、
日本で仕事をする以上は、誰と話すにも敬語が一番楽なんですよ」
そうなの?
高鍋さんはまだ20代半ばかと思ってた・・・それが・・・32才?
「言っときますけど、片桐さんね、
レベル高い大学出るのも大事かもしれませんけど、
人生渡ってくのに学歴って関係ないですから」
考えたこともなかった。学歴が全てかと思ってた。
「学歴で人を判断する人ってのは、
結局その人の上っ面しか見てないってことっすよ。
従って、例えば日本で最高学府の大学を出たとしても、
外に出れば片桐さんみたいに海外の大学出の人はゴロゴロいるわけで、
それがコンプレックスになったりして、
外に出れないって人いるんですよ」
何が言いたい??
「何が言いたいかって言うのは・・・」
車を左車線に入れる。
「人の上っ面しか見ない人は、
それ相当の人としか出会わないってことですよ」
「どういう・・・?」
「はぁぁぁぁぁぁ」私の目を睨むように捉える高鍋さん。
「あ、友人を送りに行きます」
と、パスポートと身分証を成田空港の検問で提示する高鍋さん。
「片桐さん、俺、なんで北島さんとこで雇ってもらえてるのかっていうと、
そういうのちゃんと分かってるからですよ」
「何が?」
「・・・ほんと、なんで北島さん、片桐さんを雇ったのか、
意味が分かりません」
ギアーをパーキングに入れる。乱暴に車から降りる。
ターミナル前のシグナル、一斉に変わるブルー。
足早に走り、私たちは目的地へ急ぐ。
厳密には、高鍋さんに手を引かれ、強引に横断歩道を渡っている。