外国育ちのお嬢様は硬派がお好き

「桃華さんは、アンコウ鍋食べたことあります?」

・・・もう我慢できん!とばかりに泡立つ鍋の蓋をかすみさんが取り去った。

ふっわ~と湯気が部屋中に広がり、味噌ベースの出汁の香りが食欲中枢を刺激する。

「アンコウっていう魚」祐哉が先に言う。
「あ・・・無いです」魚。
私もバカじゃない、はず。
確かあんこうの旬は冬だったはず。
夏場は味が落ちると聞いたことがある。
これを作ったのは、『かすみ』さん。

もしや、意地悪されてるとか?

「あ、そ」

・・・えーーーーーーーー

何その冷たい態度。

帰りたい・・・

けど、今いるここは何を隠そう、私の家。
絶対に逃げられないシステムになってる。

いきなりの鍋パーティー案でびっくりしたんだけど、
きっとこれは高鍋さんの配慮だ。

このウサギめ、私はぜんぜん大丈夫なのに。

「だからその態度、やめなよ」

ウサギの皮を被ってる高鍋さんがかすみさんに言い寄る。

「黙ってて」

こわっ!

「そもそもが、この並びだって私は気に入らないのよ」

かすみさんはその外見とはにつかわしくない物言いだ。

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