外国育ちのお嬢様は硬派がお好き

並びって・・・
ダイニングテーブルの真ん中に、鍋。

私の隣は高鍋さんで、私の前は祐哉、高鍋さんの前はかすみさん。
祐哉の横に、かすみさん。
何の問題があるというのか。

祐哉の彼女のかすみさんはその位置で問題ないはずでしょ?

「本当だったら私は桃華さんのところよ」
うっわー、「あ、じゃ、変わりましょうか」
腰を上げようとしたら高鍋さんに止められた。

「あ?」祐哉が舌打ちし、かすみさんが高鍋さんを睨む。

なんだかなぁ、この雰囲気といい空気といい、やだなぁ・・・

誰一人として手を付けることなくそのまま放置される鍋。

「あの・・・」何か言わなきゃ。

みんなの視線が一気に私に集まる。

えっと、何か言おうと思ったけど、何を・・・

「ちょっと話がしたいんだけど・・・いい?」

高鍋さん?
けっこう綺麗な目、してるんだ。
こくこくと頷く私。腰を上げた高鍋さんにつられて私も腰を・・・

「かすみさん、ちょっといい?」

はい?

なに?

私じゃないの?

「いいわよ、もちろん」かすみさんもかなりの強気だ。

二人はリビングのソファーのところに席を移した。
ダイニングには祐哉と私の二人。

「やっぱお前だけだな、なんにも分かってねーの」

ふっと鼻で笑って言う祐哉は、なんだか哀れみの目を私に向けている気がした。

じゃ、先に食おうか、と、鍋に話題を変える。

良かったな、鍋よ。
やっと話題の中心はお前に行く方向で動いたぞ。

と、全く分かっていない私は、鍋にささやかな八つ当たりをしてみた。






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