外国育ちのお嬢様は硬派がお好き

静かになった廊下。3つ先の部屋をちらりと見る。

ちょっと行ってみようかな。
会いたいし・・・

コホンと咳をひとつ。

涼しい廊下は居心地が良い。深呼吸して、(なんでこんなに緊張する?)
ドアーの前に立つ。

どきどきする左胸を右手でとんとんする。

かちゃり

「・・・ほんとなんでこんなに不用心なんだろうか」

やっぱり開いてしまうドアーに不安感を募らせたのもつかの間、

やっと撫でつけた心臓に杭が突き刺さる衝撃を受けた。

祐哉の革靴しか置いていないはずの玄関に、

見知らぬ女性物のサンダルがちょこんと置いてあった。

どうしよう、ショックすぎて玄関に片足つっこんだまま動けない私。
心臓は鉛色に濁り、ただ無駄に血液の循環を加速させている。

このまま引き下がるのか、のこのこ上がり込むか・・・2つに1つ・・・

誰なのいったい?

足下に届くエアコンの風は心地よいのに、私の心は全く心地よくなかった。

廊下をダッシュしてくる気配に我に返り、玄関のドアーを閉めた。
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