外国育ちのお嬢様は硬派がお好き

「・・・あのさ」

田中さん、かすみさん、私の順で祐哉がそれぞれの目を捉える。

「わりぃ」頭を下げた。

「何もしてねーと思う」
「・・・はい、何も・・・されていません」涙声だ。
「それから・・・」

無言で見つめ合う田中さんと祐哉に心がズキンとした。

「それから、俺、君のこと全く知らねぇ」

潤んだ瞳をぱっちり開いて息を止める田中さん。

「・・・っとに・・・バッカじゃないの!あんたって人は!
たいしてデカくもない会社の、たいした数もいない、
数少ない従業員の顔と名前すら覚えてないなんて・・・
社長失格!てかその前に男として失格!」

烙印を押された祐哉はなんの反応も出来ない。

「で!・・・」かすみさんの暴言を一言で制した。

「悪いんだけど、俺には好きな奴がいる」
「・・・はい・・・そう・・・ですよね・・・」
「そいつはまだはっきり何も言ってこねーから、
どうなるのかは分からないけど」
「・・・・」

ちらりとかすみさんが私を睨む。
目は『ほら、あんたがさっさとすることしないから、
面倒くさいことになってんじゃないよ』

と間違いなく言っていた。

かすみさんから目をそらし、祐哉の方を向くけど、
そこには上半身裸の腰辺りしか目に入ってこない。

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