外国育ちのお嬢様は硬派がお好き
間違いなく私の部屋。
もう夜の10時を回っているから、不動産会社の人がいるわけない。
いや、もしかしたらいるのか?
スーツケースは玄関に起きっぱなしにして、
抜き足差し足忍び足・・・
リビングのドアーをそろっと開けると、
中からはセンスの良いクラシック音楽が響いている。
目の前には宇宙空間のように、東京の夜景が見渡せる。
天井の高さが気持ちを落ち着かせ、
間接照明の優しい明かりに癒される。
この部屋はすごく居心地がよい。
「きれい」
導かれるように窓の所へ歩く私の後ろで、
いきなり低い男の人の声がした。
「お前誰?」
咄嗟に振り向いたそこには、シャンパンボトルを持った背の高い男の人が不審者を見る目で私を見ていた。