外国育ちのお嬢様は硬派がお好き
脱出方法を考えている時のことを思い出した。
「なんであの時さ、田中さんいきなり怒り出したわけ?」
リビングのソファーはやっぱ落ち着く。
周りには飲み散らかしたお酒の残骸、
それを避けて、空いている隙間に腰を落ち着けていた。
「あぁ、あれはな・・・」思い出したようにくすっと笑う。
私の必死の告白をして、祐哉を田中さんから引き離した時、
私の手は震えていたらしい。
自分では気付いてないんだけど、
彼の手首をぎゅっときつく掴んでいたみたい。
で、俺のこと好きなの?って聞いた後の、私の「好きだよ」って言葉に、
『あ、こいつやっと一皮剥けたな』って感じて、
だったら話は早いなって、田中さんのところへ歩みよった。
髪の毛に指を通して、その顔を両手で抑えて、唇を近づけて、
キスするように見せて、耳元でこう、囁いた。
『君に俺は似合わない』