外国育ちのお嬢様は硬派がお好き
「私は全てを無くしました」
マークはテーブルの上で両手を組んだ。
「自業自得だろ」
「そうですね。心のどこかでシェーンは何があっても私から離れないって、
そう思ってました。傲り(おごり)だったんでしょうね。
まさかこうなるとは・・・私とシェーンは通じ合っていると感じていましたし、
彼女は何があっても私から放れないと強く感じていました」
「あいつとお前は似てるよ」
「似てる?」
顎に手をやり、祐哉を注意深く観察する。
「その傲慢さと、自意識過剰な部分は兄妹みたいにそっくりだよ」
くすりと笑う祐哉にはなんの嫌みも含まれていない。
「そうでしょうか」
「合わねーよ、お前たちじゃ。お前達はお互いに格好つけて、本心を見せ合ってない。上っ面ばっか作って、自分のいいように相手を動かすことしか考えてないだろ?
そんなんじゃ、遅かれ早かれダメになるのは目に見えてんだよ」
「・・・あなたは本当に自分に自信がある。
そんなところにシェーンは惚れたんでしょうか」
「あいつはフランスと日本の血が混ざってるから、どっちに働きかけるかで
その後の行動が変わってくるんだよ」
「へぇ・・・そうでしたか。そこまで考えて行動するなんて、
なんかくやしいですけど、妬けますね。
でも、私にもプライドがあります。シェーンにはっきり突っぱねられ、
またあなたにもそこまで言われてしまったら、男としての立場が無い。
あなたの仰る通り、私はシェーンを使っていたのかもしれない、ですが、
愛していた気持ちは誰よりも強いと自負しています。例えそれが戦略であったとしても。彼女は僕と一緒になった方が幸せだし、ご家族の仕事上も都合がいいと思います」
ようやくコーヒーに口をつける。
「それが問題なんだよ。家とか都合とか、そんなのどうでもいいだろ。
本人同士の問題なんだよ。本人同士がどうなっていきたいかで将来が変わるんだろうが。そこが分からねぇ限りお前に幸せはねーし、そうやって何度もいろんな女ひっかけて遊んでろや」
「私は諦めませんよ」
今祐哉が言ったことなどどこ吹く風で、マークが笑顔で微笑む。
不気味な笑いだ。
祐哉は相変わらず不機嫌そうだ。