外国育ちのお嬢様は硬派がお好き
一緒になって初めてのバレンタインに、桃華は浮かれぽんちになっていた。
今までは男性から花束とカードを受け取り、
ディナーを楽しむという風習だったものが、日本はそうじゃなかった。
女子が好きな男子にチョコレートをあげて、
「好きです、付き合って下さい」
と、告白する一代イベントでもあった。
「高鍋さん!チョコレートの作り方を教えてみてよ」
ふんぞり返って頼む桃華。
「・・・人に頼むのになんでそんな上からなわけ?」
オフィスの桃華のデスクの前は高鍋さんのデスク。
「しかも今日の今日で?」
「・・・チョコなんてそんなもんすぐ作れるでしょ?
祐哉と会うのが20時だから、その前にちゃちゃっと」
「・・・知らないと思いますから一応言いますけど、
俺、男ですからね」
だから何?とばかりに次の言葉を待つ桃華。
「はぁぁぁぁぁ・・・・・かすみさんにでも頼んでくださいよ」
「かすみさん、そういうのやる人?」
そうは思えないけど?
「去年も手作りチョコ貰いましたよ俺」
「そういうのは早く言ってよ!」
コートをひっつかむと、一目散に会社を後にした。
「え?早退?」
高鍋さんが後ろから嫌みを言う。
「違う!自宅で仕事してる!」
言い訳をして、会社を出た。