外国育ちのお嬢様は硬派がお好き

と、マンションのエントランスから人の影。北島さんだ。
ぅわ!とっさに体を下にずらし見えないように隠れる。
たぶん大丈夫なはず、見られていないはず。隠れる理由は一つ。
彼は私がここに住んでいるという事実を知らない・・・はずだからだ。
あっぶないあぶない、危うく見つかるところだった。
額の汗をふぃーっと拭く。

「何やってんすか?」バックミラー越しにしかめっ面。
「え?あ、シートで滑っちゃって」見苦しい言い訳。

高鍋さん曰く、依頼主は超堅物で少しでも気に入らないと・・・

帰るらしい。

仕事上そんなことが許されるかぃ!ボケが!
と突っ込んでみるも、高鍋さんは本気だ。

「これまでも何回かアタックしてんですよ。でもぜんぜんダメで」
「なんでそんなとこと仕事しなきゃなんないのよ」
「これですよ」
指でお金のジェスチャー。
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