東京
適当に準備を済ませ、タバコと財布をポケットに入れると、紗耶香さんと一緒に外に出た。
まだ肌寒い空気に少し力みながら、紗耶香さんが大好きなカフェに向かう。
『春休みは静岡帰る?』
「帰るよ。紗耶香さんも帰るら?」
『…帰らない。』
「帰らないの!?」
紗耶香さんに2回目に会った時、同じ静岡県出身と言うことがわかった。
「何で?」
『東京の友達と旅行行く。だからお金使っちゃうし。』
「鈍行で帰ってこれるら?」
『他にも予定いれちゃったし。資格もとりたいから。』
「ふぅん。」
まだ学生の俺は、社会人の紗耶香さんは無条件でお金を持っていると思っていた。
その紗耶香さんにお金がないと言われるとピンと来なくて、何となく変な緊張をしてしまって、深く聞くことが出来ない。
カフェに着き、朝食を取りしばらく休む。
お会計の時に「出す。」と言うと
『切羽詰まってるわけじゃないの。』と少し笑った。
店を出ると
『また行くね』
と言って紗耶香さんは帰っていった。
少し不機嫌に手を振り自転車にまたがると、タイミングよくあゆみから電話が来た。
『プラネタリウムに行こう。』