東京

適当に準備を済ませ、タバコと財布をポケットに入れると、紗耶香さんと一緒に外に出た。


まだ肌寒い空気に少し力みながら、紗耶香さんが大好きなカフェに向かう。


『春休みは静岡帰る?』

「帰るよ。紗耶香さんも帰るら?」

『…帰らない。』

「帰らないの!?」

紗耶香さんに2回目に会った時、同じ静岡県出身と言うことがわかった。


「何で?」

『東京の友達と旅行行く。だからお金使っちゃうし。』

「鈍行で帰ってこれるら?」

『他にも予定いれちゃったし。資格もとりたいから。』

「ふぅん。」

まだ学生の俺は、社会人の紗耶香さんは無条件でお金を持っていると思っていた。
その紗耶香さんにお金がないと言われるとピンと来なくて、何となく変な緊張をしてしまって、深く聞くことが出来ない。


カフェに着き、朝食を取りしばらく休む。
お会計の時に「出す。」と言うと
『切羽詰まってるわけじゃないの。』と少し笑った。

店を出ると
『また行くね』

と言って紗耶香さんは帰っていった。

少し不機嫌に手を振り自転車にまたがると、タイミングよくあゆみから電話が来た。



『プラネタリウムに行こう。』



< 11 / 97 >

この作品をシェア

pagetop