東京
紗耶香さんは逃げたのかもしれない。
あるいは俺が。

昨日はどうも変だった。

ライブを終えて部屋にやって来た紗耶香さん。

俺が風呂から出てきたら誰かと電話で話をしていた。


『明日は午後から入ってるでしょう?うん。私も。…悠哉が終わるまでいるからじゃあ帰りに…うん。うん。…じゃあね。』


タイミングをみて部屋に戻ると、紗耶香さんイソイソと携帯を鞄にしまった。

「仕事の人?ていうか彼氏?」

内心ドキドキしていた。

そうだよ。
って言われたら、俺はどうするつもりだったんだろう。

『違うよ。彼氏なんていないし。バイトの子だけんね。』


電話中はすっかり標準語に戻りやがって。

悠哉って誰だよ。

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