東京

『ばっち!』


タイミングよく走ってきたのは腰までビショビショになったあゆみだった。

『いつまで座ってるの?らしくないなぁ。』

わははは。と笑うあゆみ。
俺はあゆみが強がりなことは知っていた。


悩みを顔に出さないことも知っていた。


泣き虫なことも。

すぐ溜め込むことも。

人のことばっかり気にすることも。

今とても辛そうなことも

「あゆみ。」


『なぁに?』


「あのさ、紗耶香さんが。」


『紗耶香?』


嫌な感じに沈黙が続いた。
俺は甘えたんだ。

弱ったあゆみに

静岡に残ってと言ってほしくて。

そして必ず言うと言うこともわかってた。


『明日でしょ?』

「‥。」

あゆみは急にバカ笑いした。

『汗臭いよ!』

「水だよ。」

『実に水くさいね!』

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