東京
電話の内容は、今日家に来るという話だった。
友達と久しぶりに会うから、終電を気にしたくないとのことだ。
たまにある。紗耶香さんが家に来ることは。
ふう。
とため息をつき、ガラス張りの部屋に戻った。
ガチャ。
『もう取り込んだら終わりだよ?』
「ありがとう。」
『また来るって?紗耶香ちゃんは。』
「よく分かったね。」
『嬉しそう。早く告白すればいいのにー』
「告白も何も。あいつは俺の気持ちくらい気付いてるけんね。」
『そうでした。撤収!講師室に持ってって帰ろう!』
手際よく編集気を片付けるあゆみの手元を見つめ、数分前の紗耶香さんの声を思い出す。