東京

住所は知ってた。


市名と町名と数字は1と2と3だけなの。簡単でしょ?


と、無邪気に俺に話してくれたことを思い出す。

そんなあゆみを
「覚えらんねぇよ。そんなの。」
と、冷たくあしらったのはなぜだろう。
会ったその日に一目惚れしていたのに。


桜の舞うこの学校に、怯えたように立っていたあゆみ。

可愛いなと思って近づいて、好きだと思ってちょっかいだして。

すぐに俺を好きになってくれたあゆみの無邪気さに、俺への素直さに怯えて
突き放した初夏。



その頃からばっちは
あゆみを支え
俺を押してくれていた。


あゆみに信頼され
愛され
なつかれているばっちに
時には激しく嫉妬した。


それでも俺はばっちが大好きで
大切だった。

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