ピアニストの我が儘
ピアニストの我が儘
幼稚園の頃から幼馴染みの翔と、卒業したのは普通の私学校。
私達は三歳からピアノを習い、私は四歳で挫折した。

側に天才がいたからだ。彼の指先は魔法にかかっているようで。人間離れしている。

「翔君のお母様、翔君は才能があります。今から腕を磨いて音大に入るか、早々にパリの音楽学校に編入するか、ご家族で相談なさってください」

音楽教室の先生は小さな翔の肩に手を置いて、そう言った。
私はピアノの前に座って足をプラプラさせながら、他人事のように聞いていた。

なぜか翔は俯いて、ポロポロと涙を流し始めた。
私には翔の気持ちがわからなかった。どちらにしても、辛い決断を迫られていたのだろう。

翔が泣きながら帰っていったあの日。私は最後に習った「猫踏んじゃった」を弾いて帰った。
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