痛い恋なのかな?

 確かなことは、タマは痛みに耐えながら俺を受け入れたこと。
 やけに鮮明に覚えているのは、薄暗闇の中、タマの白い肢体と長い黒髪が、しなやかに舞っていたことだ。

 きれいだった。
 女神、天使、妖精、神々しさを感じるくらい。
 
 愛おしかった。
 誰よりも近しい存在、かけがえのない存在、大切な存在。

 全てが終わり、抱き合いながら眠り、そして俺は醒めた。
 俺の中にあったのは、満ち足りた想いと、反比例するように大きく深い罪悪感。
 最も大切な存在を傷つけてしまった。
 愕然とした。
 
 タマの寝顔を見つめる。
 タマもゆっくりと目を覚ました。
 穏やかに微笑み、俺の顔をじぃっと見つめる。
 その微笑みが固まった。
 俺の罪悪感が顔に出ていたのだろう。
 
 まずい。

 俺は少なからず努力して笑顔をつくり、タマの髪をそっと撫でた。
 その瞬間、俺の中で罪悪感よりも愛しさが勝った。
 タマにも伝播したのだろうか、安心したように目を細めた。
 
 ほっとした。
 そして痛感した。

 俺はタマに相応しくないと。


 最後の試合に負けた感傷、酔った勢い、幼なじみへの甘え。
 そんなものでタマを傷つけ、汚してしまった。
 愛情がないわけでは決してない。
 でも、体を重ねる前には?
 はっきりした愛情を持っていたとは言えない。
 どう償えばいい?
 どうすれば赦される?
 否。
 赦しを請うことさえ赦されない。

 スタートを間違えてしまった
 もう「元」には戻れない。
 もう「先」にも進めない。
 だけど、一緒にいたい。

 ……そうだ。
「今」のままでいれば、なんとかなるんじゃないか?
 ただの幼なじみには戻れないし、恋人にもなれない。
 でも、失敗が一度だけということを免罪符に、幼なじみ以上恋人未満の関係を保ち続ける。
 死ぬまで――あるいはタマから拒絶されるまで。
 自分勝手だと思う。
 でも、どうか、そうさせて欲しい……。

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