冬景色
彷徨う心を抱えて訪れた場所は、5年前と変わらぬ佇まいで
私を迎えてくれた。
目を閉じて、心と向き合った。
背後から歩み寄る足音に、振り向いた途端腕をつかまれた。
「ここで結婚式なんて嘘だ!」
「あなたもお祝いしてくれるでしょう」
「本気で言ってるんですか」
「本気よ、決めたの」
「僕の気持ちはどうなるんですか
僕が卒業するまで、待ってくれているんだと思ってた」
彼の手には招待状が握られていた。
自分の心が揺らがぬように、彼にも私との未来を抱かせぬように、
母校のお御堂で式をあげると決め、彼にも招待状を送った。
二重のロックをかけたつもりだった。
「あなたは僕のものだ」
青年になった目が私の心を溶かしていく。
逞しくなった腕が、
私を抱え、温かく光に包まれた場所から冷気が広がる外へと連れ出した。
指からひき抜いた婚約指輪を遠くへ投げた。
光を浴びたリングは雪景色の中へと消えていった。