気づいてよ…
父さんの病室の前。
俺たち2人は深呼吸をする。
見舞いに来た時の習慣になってるんだ。
できるだけ明るく振舞わないと父さんが心配するから。
「行こっか」
美都の言葉で俺がドアをノックする。
“松本太一(matsumoto-taiti)様”って書かれている個室。
「…はい」
弱々しい父さんの声がした。
俺と美都は頷いて部屋に入る。
「父さん、久しぶり!」
「お煎餅持ってきたよ?」
精一杯の明るい声で話しかけた。