たっぷりのカフェラテをあなたと
 絶望に近い気持ちで足を運んだのは、健吾さんが勤めているクリニックだった。

 まだ診察している時間だっただろうけど、私はそのままクリニックの待合室で呆然と座っていた。

「あの、受診される方ですか?」

 私が何分経っても診察券を出す様子が無いのを見て、受付の女性が声をかけてくれた。

「……いえ、ちょっと笹島先生に用事があって」
「そうですか、ちょっとお待ちください」

 女性はパタパタと受付窓口に戻り、内線で健吾さんに私がいる事を伝えてくれているみたいだった。

 しばらくして、白衣を着たままの健吾さんが現れた。

「どうしたの、用事があるなら携帯に電話くれればよかったのに」
「うん、そうなんだけど……健吾さんの顔が見たくて」

 声を聞いたら、その場で大声を出して泣いてしまいそうだった。だから、気持ちがまだ持ちこたえている間に健吾さんに会いたいと思ったのだ。

「とにかく……空いてる検査室でちょっと待ってて」
「うん」

 具合の悪い患者という事で、私は検査室のベッドに横にならせてもらった。

 もう……胸が苦しいばかりで、全く涙が出て来ないのが不思議だった。
 健吾さんを見たら号泣するかもと思っていたけど、心が麻痺したように何も感じない。


 そのうち、心がシャッターを下ろすように視界が暗くなり……そのまま眠ってしまった。
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