たっぷりのカフェラテをあなたと
「絵里ちゃん」

 名前を呼ばれ、目を開けると……私服になった健吾さんが私を心配そうに見ていた。

 病院にはもう誰もいないようで、シンと静まり返っている。
 病室の白い壁が自分に迫って来るようで……猛烈な圧迫感に襲われた。

「健吾さん……わたし……」
「大丈夫?」

 ゆっくり私を起こしてくれる彼の腕にしがみついて、私は胸につかえていたものを吐き出すように言葉を口にした。

「苦しい……泣きたいのに。涙が出ないの……この苦しみ……健吾さんはどうやって乗り越えたのかなと思って」

 私の体をしっかりと抱き留め、健吾さんはホウっと一つ息を吐いた。

「僕は……仕事に救われたかな」
「仕事?」

 彼の穏やかなマイペースさがいつも不思議だった。

 怒りの炎とか苦しみの色とか……そういうものがほとんど感じられない人柄。
 絶対苦しいことがあるはずなのに……それが見えない。
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