愛罪
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「真依ちゃん、次はあれに乗ろー?」
「うん。いいわよ」
家族連れで賑わう、午後の遊園地。
昨晩、瑠海には悪いけれど願った雨天にはならず、遊園地日和の快晴が頭上に広がった。
絶叫マシーン等で絶叫した試しのない僕は何にも乗らず、しっかりと手を繋いで園内を歩く二人の後ろを付いて歩く。
すれ違うのは、父親に肩車された子供のはしゃぎ声や、歩きながら食べられるスイーツを親にねだる子供の声。
まさに、幸せに満ちた空間だ。
辛いという言葉の中に無理やり足された一本の棒が僕で、偽りの幸せの中を彷徨っているよう。
「そら。あなたは乗らないの?」
優しい風に乗って届いた美声にふと視線を前に戻せば、今か今かとコーヒーカップを見る瑠海と手を繋ぐ真依子が僕を見て小首を傾げていた。
こうなった経緯は、言わずもがな昨日の彼女からの電話だった。
瑠海に出させたのが僕の失態で、真依子からの着信は“明日休みなのだけど、前に瑠海ちゃんと約束した遊園地、どうかしら” というものだった。
もちろん瑠海は頷き、僕は電話を切ったあとに瑠海からその内容を聞いた。
かけ直して断ればよかったのだけれど、楽しみだとはしゃぐ瑠海を前に、そんなこと言えるはずもなかった。