愛罪
+++
後藤さんに指定された通り、まだ比較的日の高い午後三時過ぎに警察署を訪れた。
来る途中、瑠海に聞いた。
『永瀬さんとは何をしてるの?』と。
僕が後藤さんと母親のことについて話す最中(さなか)、彼女は永瀬さんと何をしているのか無性に気になっていた。
警察署だから子どもを預かることも少なくはないだろうし、多少の暇潰しになる玩具やDVDなどが保管してあって、それらで楽しく過ごしているものだと思えば。
瑠海は、嬉しそうに言ったのだ。
『ママのお話し!』と。
どんな?ーーとは聞けなかった。
何となく、僕の胸がぐしゃりと音を立てて押し潰されてしまうほど、聞くのが怖い内容のような気がした。
「お兄、早くしてね!」
「…うん。大人しく待っててね」
僕の言葉に頷いた瑠海は、彼女と同じく髪をポニーテールに結んだ黒いスーツ姿の永瀬さんと手を繋いで廊下を歩いて行った。
やはり、女性に向けられる瑠海の笑顔はきらきらと輝く。
情けない嫉妬心を燃やしながら、後藤さんに促されて見慣れた個室のドアを抜けた。