愛罪



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 後藤さんに指定された通り、まだ比較的日の高い午後三時過ぎに警察署を訪れた。

 来る途中、瑠海に聞いた。

 『永瀬さんとは何をしてるの?』と。

 僕が後藤さんと母親のことについて話す最中(さなか)、彼女は永瀬さんと何をしているのか無性に気になっていた。



 警察署だから子どもを預かることも少なくはないだろうし、多少の暇潰しになる玩具やDVDなどが保管してあって、それらで楽しく過ごしているものだと思えば。

 瑠海は、嬉しそうに言ったのだ。

 『ママのお話し!』と。



 どんな?ーーとは聞けなかった。

 何となく、僕の胸がぐしゃりと音を立てて押し潰されてしまうほど、聞くのが怖い内容のような気がした。



「お兄、早くしてね!」

「…うん。大人しく待っててね」



 僕の言葉に頷いた瑠海は、彼女と同じく髪をポニーテールに結んだ黒いスーツ姿の永瀬さんと手を繋いで廊下を歩いて行った。

 やはり、女性に向けられる瑠海の笑顔はきらきらと輝く。

 情けない嫉妬心を燃やしながら、後藤さんに促されて見慣れた個室のドアを抜けた。



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