愛罪
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最後の手段だった。
僕はあくまでも後藤さんに従い、必要以上に真依子に深入りせず、彼女と母親の関係を暴くことを目的としていた。
けれども、ここまでくると僕が出ざるを得ない。
「珍しいわね。そらから会いたいだなんて」
マグカップに注いだ市販のカフェオレを出すと、真依子は薄く笑った。
僕は彼女との間に絶妙な距離を保ってソファに腰を沈める。
後藤さんに彼女のことを語った僕は、最後にこう言った。
ーー『聞いてみます。本人に』
聞くとは具体的に何をと問われれば難しいけれど、とにかく本人と対話するのが最善策な気がした。
ナースのこと。良太さんのこと。
真依子は何を抱え、何を隠し、何を訴えたいのか。
彼女にとっては無関係である後藤さんよりは、問い質す権利があるはずだ。
「わかってるくせに」
「何をかしら?」
今日は流石に瑠海を同席させる自信はなく、今朝のうちに祖母に預けてきた。
故に、静寂とした冷ややかなリビングがいつもより広く感じる。
真依子は僕の呟きに、マグカップを手にして小首を傾げた。
全て知っているような顔をしながら疑問を表す彼女は、美しいほど憎い。
わかってるくせにーー。