愛罪
「とぼけなくてもいいよ」
カフェオレにひとくち口をつけた真依子を横目に、僕は言う。
言い放つように冷たく、叩きつけるように鋭く。
それでも彼女は顔色ひとつ変えず、かたりと音を響かせてマグカップをテーブルに置いた。
「…あなたが呼んだんじゃない」
「どうして来たの」
ふっと鼻で笑った彼女は、食い気味に被った僕の言葉にゆっくりとこちらを向いた。
繋がる視線は、何だか脆弱で。
一定のリズムを保つ心臓の音が、煩くなった気がした。
「僕の目的をわかってて来たんでしょ。どうして」
素朴な疑問に過ぎない。
どうしてなのか、単純に気になった。
確かに真依子は、逃げたり隠れたりそんな卑怯で無様な姿を僕には見せないだろうけれど、こちらからの明白な呼び立てにのこのことやってくるのは不思議だった。
彼女には何か考えがあるんじゃないかと、そう思った。
「…何が聞きたいの。あたしに答えられることかしら」
妥協したのか何なのか、真依子は妙に素直になって僕を見つめた。
形の良い薄い唇が薄く緩められて、挑発するかのように微笑む。
「君にしか答えられないよ」
「…そう」
互いを窺うよう、僕たちは一瞬たりとも視線を外したりはしない。
彼女が浅く頷いたのを見て、僕は決心して言う。