愛罪



 証拠とは程遠いけれど、同等の意味を持つ気がした。

 三人の自殺は、必ずや彼女と関係している。

 これがもし偶然だと言うのならば、僕はきっと、偶然じゃないという証拠を探し出してみせよう。



 真依子は僕を見つめ、小さく笑んだ。



「…まだ言ってるのね、お母様のこと」

「君が何も吐かない限りね」

「吐かないも何も、吐くものがない場合はどうすればいいのかしら」



 少し首を傾げてみせた真依子は、試すような眼差しで僕を射すくめる。



 どこまでも白(しら)をきるつもりらしい。

 茉里さんと主治医が自殺したという事実に辿り着いた瞬間、真依子が母親の自殺に関与しているに違いないと踏んだ。

 証拠はなくても、確信はある。

 彼女と直接関わった早川さんと主治医、直接じゃなくとも関わりがあってもおかしくはない立場にいた母親。



 ただひとつ。

 ただひとつだけまだ僕が納得出来ないのは、母親を自殺へ追いやった理由だ。

 後藤さんが調べてくれた中には、母親と真依子はおろか彼女の兄との関わりもなかった。

 だとすれば、真依子が母親を憎んだ理由はーー?



 黙って思案を巡らせていると、ふと視界に映っていた人影が揺れた。



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