愛罪



 どこまでも情けない自分に嫌気すら感じていると、続けるように後藤さんが言う。



「今日お呼び立てしたのには理由がありましたが、気持ちが落ち着いてからもう一度来て頂けますか?」



 彼は僕に気を遣い、そう尋ねた。

 はじめはその言葉に甘えようとしたのだけれど、それは違うと思った。

 ここで後藤さんに甘えてしまうと、彼から貰った言葉たちが全て水の泡だ。



「…大丈夫です」



 相変わらず冷たく響く僕の声だけれど、後藤さんは些か安堵した様子で小さく笑った。

 今までの僕なら甘えて帰っていただろうと思う。きっと彼も、そう思っていたのだろう。

 後藤さんは唇から笑みを消すと、ふっと真面目な顔をしてこう言った。



「…非常に言い辛いのですが、二条さんに関する調査が全て終了してしまいました。何も浮かびあがらず、難航状態です」



 後藤さんは、まるで自分のことのように哀しそうな表情で僕を見つめる。



 何となくこうなる予感はしていた。

 主治医と担当ナースの自殺で真依子に調査が入らなかったのだ、時が経ったところで何か浮かびあがるはずもない。



 ただ、僕には収穫があった。



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