愛罪
真依子から連絡があったのは、母親の自殺から一ヶ月と一週間経った日のことだった。
その日、まだ僕を警戒しつつあった瑠海を祖母に預けて後藤さんの元を訪れ、真依子に会いに行った話を聞いた。
彼女は、何も吐かなかったらしい。
主治医のことも、茉里さんのことも。
ただ、僕に言ったように“茉里なりの償いだと思う”としか口にしなかったようだ。
後藤さんが根気強く二時間粘っても、収穫はゼロだったらしい。
彼も僕も、しばらく黙りこんでいた。
必ず何かを知るはずの彼女から叩いても埃が出ないのは、何故なのか。
隠蔽された何かは彼女にとっていいことなのか悪いことなのか。
それぞれの想いを胸に口を閉ざしているときだった、僕の携帯に真依子からのメールが届いたのは。
【話したいことがあるの。会える?】
真依子からのメールは、非常に淡泊だった。
たった今、彼女の話で頭を抱えていた僕が後藤さんにそのメールを見せると、彼は早く会うよう僕を促した。
一時間後にうちに来てくれと返信し、どういう内容だったか報告することを後藤さんと約束して僕は警察署をあとにした。