愛罪
瑠海のいない我が家は、やっぱり冷ややかで暗かった。
ふと、孤独が押し寄せるのだ。
僕が母親は帰らないかもしれないと告げてしまった日、後藤さんに助けられて素直に瑠海に謝ることが出来た。
けれど、彼女は許してはくれなかった。
『僕、ちょっと疲れてたみたいなんだ。あんなこと言ってごめんね。ママ、きっともうすぐ帰ってくるよ』
太陽が真上に昇り、日射しの強い帰り道。
僕たちの心とは裏腹にしっかりと繋がった手は滑稽なほどぎこちなくて、僕は出来るだけ優しい声色で謝罪した。
しばらく黙りこみ、こちらを見あげようともしなかった瑠海は、僕を見ないままこう言った。
『…やだ。許さない』
小さな彼女にとって、僕の軽率な言葉がどれだけショックだったのかを思い知らされた瞬間だった。
顔を覗きこもうとしても頑なにそれを許してはくれず、その日から数日、瑠海はあまり喋らなくなって。
昨晩、瑠海が眠ってから祖母に電話をしてここ数日であった出来事を話すと、瑠海を連れておいでと言われた。
このまま離れるのはどうかと思ったけれど、いつもは僕のいる左側を向いて眠る彼女が右側を向いて眠っている姿を見て、僕は彼女を一度祖母に預けようと決心した。