愛罪
ごくりと飲みこむ衝撃で少し動いた喉が色っぽくて、でも、視線を上へ滑らせて目を合わせた。
試すような目つき、片方が吊りあがる唇。
悔しいけれど、綺麗だ。
「…ふざけてる」
「あたしが?至って真面目よ」
冷たく言い放つ僕に怖じ気づく様子もなく、真依子はティーカップをテーブルに置いた。
「そらは、あたしが嫌い」
小さくため息を零すものだから何を言うのかと思えば、唐突にそんなことを言う真依子。
僕は、ぴくりと眉根を寄せる。
「何それ」
「図星でしょ。わかるの、自分を嫌う人間の目って」
「へぇ」
「…言って。嫌いだって」
ふっと唇に冷笑を浮かべて真依子から視線を外すと、聞こえたのはトーンの落ちた声で紡がれた言葉たち。
理解出来ず、間髪入れずに視線を彼女へ戻すとこちらを見て笑う顔がった。
楽しい笑顔なんかじゃない。
哀しい笑顔。
眉尻を下げ、切なげに笑っているのだ。僕にはその表情の意図が全くわからなかった。
だから、思わず怪訝に歪んだ表情で真依子を見つめる。