愛罪
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けたたましいサイレンの音に目が覚めた。
シャワーからあがって一眠りしようと真依子の隣に入ったときの薄暗さとは一変、暗闇に包まれた室内を瞳に映して僕は辛い腰を庇いながら起きあがる。
「そらくん!いらっしゃいますか!そらくん!」
いるはずの彼女が隣にいない違和感と同時、ドアを荒々しくノックする葉月さんの声。
ただならぬ様子を感じとった僕は、開けたままだったシャツのボタンを閉めてベッドをおりた。
鍵はかかっていないのに未だにノックを続ける葉月さんの徹底っぷりに呆れつつ、僕はドアをあける。
「あ、そらくん!夏海さんがっ…夏海さんが…!」
ドアの向こうには、青白い顔をした葉月さんが夕飯のためにここへ出向いた、ジーンズとニット姿で立っていた。
彼女は誰が見ても異変を感じるほど動揺し、震える唇で必死に僕に何かを伝えようとする。
それを感じた僕は「落ち着いて」と彼女を支えながら部屋を出て、足早に騒音のする一階へ向かった。