愛罪
あぁ、そうだった。
僕は避妊具の窮屈感がとても苦手で、誰とセックスするときも避妊具は着用していなかった。
相手もそれを承知だったし、情事後は必ずピルを服用していたのを知っている。
迂闊だった。
彼女も他の女性と同じくピルを服用するものだと勝手に決めつけて、その辺の処理が疎かだった。
取り返しのつかないことをしてしまった。
「…父親には話したの」
「…まだよ。どうするか決まってから…話すつもりでいたから」
真依子を見つめて尋ねた僕に、彼女はやんわりと首を横に振りながら答えた。
どうするか、決まってから。
この言葉が妙に引っ掛かった。
オブラートに包まれてはいるけれど、それはお腹の子の生死を意味するもの。
そんな簡単には決められない、大切な事柄だ。
「君は…どうしたい」
決して、彼女任せにしようとは思っていない。
歴とした、ふたりの問題だ。
僕の問いに瞬きの数を増やした真依子は、少し下唇を噛んだあと、呟く。
「わから…ないの…」
女性にとっては、凄く繊細で重要な問題なのだ、整理がつかないのも無理はない。
僕はそれ以上問いつめるようなことは言わず、しばらく思案に耽った。