愛罪
「何言ってんの。瑠海は悪くないよ」
重い体を起こしながら言うと、瑠海は「悪いよ」と頑固な一面を見せる。
何度も言い合いする内に瑠海が笑いながら否定してきたのを機に、僕は切り出した。
「瑠海、帰ってくる?」
正直、怖かった。
また拒絶されたら、今度こそ立ち直れないだろうと思うほど。
でも、彼女の無邪気な笑い声に背中を押されたのも事実で、恐怖と同じくらい自信もあった。
「…いーの?」
瑠海からの返事は、恋多き女性の口説き文句の如く甘えたように僕の肯定を待った。
もちろん。だめなはずがない。
薄く笑いながら「寂しいから帰って来て」と言うと、瑠海は嬉しそうに声を弾ませて「わかった!」と言った。
そのあと、祖母が僕に代わりたいと瑠海に伝えたようで彼女の声が遠ざかる。
「そら?」
「うん。ありがと」
「そんなのはいいんだよ。大丈夫かい?」
祖母の包みこむような口調、声が僕を安心させる。
大丈夫だと返すと、久しぶりに僕の顔が見たいからだなんて珍しいことを言って瑠海をこっちまで送ってくれることになった。
電話を切り、祖母にはいらぬ心配をかけてしまったと後悔しながらシャワーを浴びるためベッドから出た。