愛罪



 ふたりは買い物をして帰ってきたようで、今日の夕飯は祖母が作ってくれることになった。

 献立は、幼少期の僕が泊まりに行ったときによく作ってくれた甘めのカボチャコロッケ。

 何年振りかな。忘れかけていた懐かしい味が口の中に広がる。



「お母さんのこと、いつ話すんだい」



 鍋で煮込んでいるジャガイモを見ていてと頼まれたかと思うと、祖母は硬いカボチャを器用に切りながらそう尋ねた。

 瑠海は、ソファに座って少女アニメのDVDを見ている。

 カウンター越しにその姿を見遣ってから、僕は隣に立つ祖母に視線を移した。



「…わかってからだよ。母親が、自殺した理由」



 少し火を弱めた僕が言うと、祖母は四等分にしたカボチャを水で洗いながらこちらを見た。



「警察の方と会ってるんだってね」

「………」

「けえさつしょによく行くんだって瑠海が言ってたよ。警察署って言葉、教えて貰ったんだろうね」



 祖母は、呆れたような小さな笑みを浮かべて蛇口の水を止める。

 僕は何も言えず、祖母の目から逃れるようにぐつぐつと沸騰する鍋に視線を落とした。



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