愛罪
早く早くと催促する瑠海を片腕で抱きあげると、僕は携帯を手に自室を出た。
そわそわと感情を高ぶらせる彼女を抱っこしながら階段を降り、リビングに入る。
「瑠海が電話したい!」
瑠海をソファにおろした瞬間、彼女は僕のシャツの袖を引っ張って隣に座るよう催促した。
僕と真依子の間にある微妙な距離感など瑠海が察するはずもなく、隣に座った僕の手から携帯を奪って真依子の番号を表示しろと目で訴えかけてくる。
例え僕らにどんな事情があろうと、真依子に電話してみようと約束を取りつけてしまったのは事実だ。
僕は瑠海から携帯を受け取ると、真依子の番号に発信して瑠海に携帯を渡した。
嬉しそうに携帯を耳に当てる瑠海。
正直、瑠海が掛けたいと言ってくれてどこかでほっとした自分もいた。
掛けたところで、真依子はきっと僕が答えを出したものだと察するだろう。
瑠海の声に安堵する真依子の声を想像しながら、微かに漏れる呼び出し音を瑠海と共に聞く。
「真依ちゃん!瑠海だよ!」
ぷつっと呼び出し音が途切れたかと思うと、瑠海が僕を見あげて真依子に話しかけた。
真依子の声も微かにしか聞こえないけれど、瑠海だとわかってその顔に笑顔が浮かんだのがわかる。