愛罪
「瑠海、真依ちゃんに会いたくて電話したよ!」
瑠海の長所である無邪気さは、今の僕には痛かった。
もしかすると、真依子もそう思っているかもしれない。
消えることを知らぬように浮かび続ける瑠海の笑顔が、真依子が断りの言葉を口にしていないことを物語る。
出来れば断って欲しかったかな、なんて。
どこまでも自分勝手だけれど、僕はわからなかった。彼女とどんな顔で会えばいいのか、何事もなかったかのように振る舞うなんてとても出来るものじゃない。
「うん!わかった!ばいばい!」
じっと瑠海を観察していた僕だったけれど、会話を終える瑠海の声に現実へ引き戻される。
通話を切った瑠海は、携帯を僕に渡しながらこう言った。
「お兄に何時に行くかメールするねって言っておいてって!」
「……そう」
嬉しそうな瑠海は僕の無愛想な返事に満面の笑みを返すと、ぴょんとソファをおりてテレビ台へ近づいた。
ガラス扉を開けて、どうやらDVDを付けるらしい彼女の行動を見つめながら思う。
真依子は、日時の他に何か僕に伝えるつもりなのだろう。
それを拒否するつもりは皆無だけれど、何を言われるのか落ち着かないのは僕が彼女よりも弱いからだろうか。