愛罪
三日後。
我が家に葉月さんが戻って来た。
母親の死を心から悔やんでくれた彼女は、憔悴から体調を崩し休養していたのだ。
昨日連絡があったとき、僕は家政婦を続けることを断った。
母親のいなくなったこの家で葉月さんが働くことは、無意味だと思ったからだ。
けれど、葉月さんはそれを頑なに拒んだ。
『夏海さんがいなくなっても、そこは私の大切な仕事場ですから』と。
それでも迷惑はかけられないと一度は否定した僕だったけれど、葉月さんの熱意に負けて家政婦の継続を了承した。
そして今朝、葉月さんはスーパーで買い物をしてから我が家に来た。
やせ細っていた体も少しだけ、本当に少しだけ肉がつき、痩けていた顔や暗かった表情にも随分と色がついた。
葉月さんと笑って話せる日がくるだなんて夢にも思わず、瑠海も久しぶりに会う葉月さんとの会話を楽しんでいた。
「瑠海、油使うからあっちで待ってて」
葉月さんとキッチンに立っていた僕は、彼女にくっついて離れない瑠海を見おろす。
まな板の上で増えていくキャベツの千切りをじっと見ていた彼女は、ちらっと僕を見あげて何だか生意気な笑顔を浮かべた。