愛罪
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翌朝、葉月さんに瑠海を任せて僕は警察署を訪れた。
後藤さんと会っているときに真依子から連絡があり、話したいこととは何だったのか彼に報告する約束だったのだ。
それを話しに来たのはいいけれど、彼女からの話は想定外のものだった。
簡単に口にすることを躊躇わせる、そんな内容だったのだ。
「そらくん?」
見慣れたいつもの個室に案内されると、力尽きるようソファに腰かけた僕に向かいに座った後藤さんが怪訝そうに声をかけた。
弱々しく落としていた視線をあげてみると、薄く眉根を寄せた彼と目が合う。
「何か言われましたか。二条さんに」
険しくなった瞳はじっとこちらを見据え、僕の言葉を待つ。
あながち間違っていないその問いに動揺したのは言うまでもなく、けれども後藤さんはきっと予想もしていないだろう。
真依子が、僕の子を妊娠しているだなんて。
「まさか、何か話されたのですか?」
だんまりを決めこむ僕に、後藤さんは催促するように質問を重ねる。
あまりにも急かすような眼差しに耐えかねた僕は、一度静かに深呼吸をして口を開いた。