愛罪
「…妊娠の報告でした」
僕が言うと、後藤さんは険しく歪んだ表情のままフリーズした。
あまりにも躊躇なく並べられた言葉に戸惑ったのか、ふと我に返った彼はまばたきを増やして僕を見る。
「…そらくんとの、子どもですか?」
一言目、何を言うのだろうと身構えていれば、それはストレートな疑問だった。
出来ればそうであって欲しくないと願う視線を受け止めながら、小さく頷く。
彼としては、信じたくなかっただろう。
協力している僕。疑っている真依子。
そのふたりの間を繋ぐ命が存在してしまったのだ、きっと彼は気を遣う。
僕の認識の甘さ故の出来事とはいえ、申し訳ないことをしてしまった。
「…気にしないで下さい。僕はまだ、産むことを任意してませんから」
この言葉が気休めになるとは思っていないけれど、少しでも後藤さんの中の葛藤を薄められるのならそれでいい。
本当の目的を改めて考えたけれど、僕はただ母親の自殺の真相が知りたいだけなのだ。
後藤さんに変な気を使われてしまうのは、本望ではない。