愛罪
僕を見守るよう、頭上には青々とした空が広がり、とてつもない空虚を感じる。
改めて独りを実感した。
瑠海だって、祖母だって、葉月さんだっているのに。
僕はどこまでも独りだと思った。
孤独とは付き合い慣れたつもりだったけれど、独りほど虚しいものはないことは誰よりも知っている。
笑い合う相手も、喧嘩する相手も、話を聞いてくれる相手も、嫌いになる相手も、孤独な人間には存在しない。
嫌いになって貰うことすら、簡単なことではないのだ。
それを今、唐突に実感した。
僕は、母親が嫌いだった。
でも、好きだった。
それは言葉にするほど安易ではなくて、感情も付いて行ってなかったけど、誰よりも愛していたと思う。
世界中の女性の中で一番大切だったし、愛して、愛されたかった。
でも、手紙を読んで僕は知った。
彼女は僕を愛してくれていたこと、見守ってくれていたことを。
どうしようもないダメ息子だったはずなのに、彼女はそれでもこんな僕の母親でよかったと、知らなかった愛を遺してくれた。
何を想い僕を見ているのかわからない父親との長い沈黙は、もちろん僕が破る。