愛罪
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真依子は、僕の言いつけ通り外出せずに自宅にいた。
出迎えてくれた彼女はまるで別人のように弱っていて、正直もの凄く驚いた。
グレイのTシャツワンピースを一枚着て、自慢の長い髪は手入れされずに右側でひとつに纏められている。
「…待ってて。何か飲み物を…」
「いらない。座って」
以前お邪魔したときと変わらぬミックスウッド調の家具が物静かに僕らを見守る中、僕は真依子を呼び止めた。
彼女はぴたりと立ち止まり、折れたようにこちらへ戻ってくる。
ソファに案内されていた僕の隣に微妙な間を保ってちょこんと腰かけた真依子を、じっと見つめる。
やがて視線に気づいた彼女の猫目がこちらへ流れて視線が繋がった瞬間、僕は言った。
「どうして嘘なんてついたの」
まっすぐ捉えた真依子の瞳は、その言葉に寸分の動揺の色を宿した。
僕にとっては単純な、でもとても重要な疑問だ。
彼女はどうして、手のひらを返すように自分が殺したとありもしない嘘をついたのか。
その覚悟は果たしてどこから来たものなのか。
僕には知る権利が大いにあると思う。