愛罪
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「パパに会うのー?」
雲ひとつない晴天の下。
手を繋いだ瑠海の間延びした声が、静かな霊園に響く。
僕は彼女の質問を無視した。
ねぇねぇ、と繋いだ手を揺らす瑠海に見向きもしないで眼前だけを見据えて歩を進める。
父親のものではない、墓石へと。
事の発端は、朝食後に掛かってきた祖母からの電話だった。
数日間連絡を取れていなかったことを優しい口調で責められるのだろうと着信を取ると、内容はそんな微笑ましいものではなくて。
『お母さんのお墓が建ったよ』
祖母の昔からの友人であるお墓職人の方が、通常ならば二ヶ月は掛かるところを一ヶ月で建ててくれた、その報告だった。
父親の墓石も、彼の温かい手で造られたものだ。
場所こそ違えど、父親と母親は同じ霊園で静かに眠ることとなった。
祖母からの報告で、僕は決めた。
瑠海を、母親のお墓へ連れて行こう。
葉月さんと楽しそうに話す瑠海に聞かれないようリビングを出てその意思を祖母に告げると、彼女も賛成してくれた。
何を言われても耐えなさいと、瑠海が大泣きしても泣き止まそうとはせず傍にいなさいと、力強くも柔らかな声で僕の背中を押してくれた。