愛罪
辛いね寂しいねととことん同情するのも愛情だけれど、大きくなって母親からの遺言を読んだとき『こんな理由があったんだ』ときちんと受け止められるよう、今から辛い現実と向き合っていて欲しい。
何も、理解しろとは言わないし言うつもりもないけれど、瑠海には母親がいない分強くなって欲しかった。
「瑠海。ママは、もういないよ」
「…っ、なんでいないの!」
彼女が瞬きをする度にその白い頬を伝う涙を見送りながら言えば、瑠海はぶつけるように声を荒らげた。
枯れた声、零れる涙、突き刺さる視線。
全ては、彼女にとって受け止めがたい現実が引き金となって現れたもの。
僕にどうにか出来ることではなくて、瑠海自身が理解し受け止めなければならない現実。
どうしてと問われた僕は、何も答えることが出来なかった。
母親は、自ら命を絶った。
しかし、四歳の瑠海に自殺という無惨な罪はまだ理解出来ないだろう。
だから僕は言う。
「今の瑠海みたいに、ママもたくさんたくさん泣いていなくなっちゃったの」
果たして良い表現だったのかは定かではないけれど、彼女にとっては一番受け止めやすい言葉だと思った。
悲しくて悲しくて涙する自分と母親が同じ立場だったんだと知れば、少しは冷静になってくれるんじゃないかと。