愛罪
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「そらくん、お久しぶりですね」
祖母に瑠海を任せて警察署に顔を出すと、正面玄関で僕を待っていた後藤さんが爽やかな笑顔を浮かべて言う。
彼の笑顔は、何だか凄く懐かしかった。
代わり映えのない黒のスーツをさらりと着こなした後藤さんのあとを付いて行き、人気の少ない廊下にある見慣れた個室を訪れた。
「どうぞ」
後藤さんがドアを開けてくれると、既に電気のついた室内に違和感を覚える間もなく目が合った。
どうして彼女がここにいるのか、どうして同じ部屋に通されたのか、このたった数秒で様々な憶測を浮かべたけれど、ドアを開けたままの後藤さんの言葉で全てを理解した。
「先ほど来られたんです。お話がある、と。そしたらそらくんから今から行くと連絡があり、それを伝えたら君にも聞いて貰いたいと仰ったのでお待ち頂いてました」
ソファからこちらへ振り返る彼女と時が止まったかのように見つめ合う僕に、後藤さんがやや躊躇いがちに教えてくれた。
ロングヘアをハーフアップで纏め、透き通る海のような爽やかな色のブラウスを着た彼女。
呆然とする僕を見て微かに微笑んだ真依子は、すっと視線を逸らして前を向いた。