愛罪
拝啓 二条真依子様
真依子ちゃん、今までありがとう。
良太さんが亡くなってから、私を気にかけて毎日病院に足を運んでくれたこと、本当に感謝しています。
きっと、私が良太さんに恋をしていたこと、真依子ちゃんは気付いていたんだよね?だから、良太さんのこと、たくさん話してくれたんだよね?
でも、私は負けてしまいました。
良太さんのいない毎日が本当に辛くて、夜も眠れずに泣いてばかり。真依子ちゃんが毎晩電話に付き合ってくれた後、その優しさにも何度も涙しました。
良太さんのいない世界は、私が住める世界じゃなかった。真依子ちゃんを置いていってしまうこと、許して下さい。
そして、ここからは真依子ちゃんにしか話さない大事なことです。
私、先生を自殺に追い込んでしまった。
良太さんを救えなかったあの人が本当に許せなくて、たくさん嫌がらせをした。今思えば馬鹿だったぐらい、私は何も見えてなかった。
真依子ちゃん、何度も先生に会いに来てたんだよね。私を想って休暇をあげて欲しいって頼んでくれていたこと、他のナースから聞きました。
私、あの人に愛人がいたことを知っていたから、それを奥さんにバラされたくなかったら遺書を書いてそれを病院の自分のロッカーに入れておいてってメモをポストに入れたの。
でも、遺書を書かせたところで本当に殺すつもりなんてなかった。ただ、苦しんで欲しかった。良太さんが苦しんだ倍、あの人を不幸にしたかった。
でも、遺書を書かせた翌日、先生は自殺した。
私が全て悪かったの。一人の人間の人生を奪ってしまった。取り返しのつかない過ちを犯したの。
いつかはバレるかもしれない。でも今は、真依子ちゃんだけにしか話せなかった。
今まで本当にありがとう。
私は大丈夫。今、凄く落ち着いてるから。真依子ちゃんと出会えて良かった。
どうか、真依子ちゃんは良太さんの分まで元気に生きてね。
早川茉里